年間広報計画は、誰に何を伝えるか、そのために何をいつ行うか、誰がどこまで担うかを一年の見通しにまとめるものです。発信する日だけを並べると準備や確認が予定から抜けるため、素材を集める日、社内で判断する日、発表後に振り返る日まで含めて組みます。
この記事では、中小企業の広報担当や兼任担当者が、実行できる年間広報計画を作る手順を紹介します。計画表の項目、四半期ごとの記入例、月の作業時間の配分例を載せています。例に使う会社・予定・時間は架空であり、アマノートの内部計画を示すものではありません。
年間広報計画と広報カレンダーの違い
広報カレンダーは、発表やイベントの時期を見渡すのに便利です。一方、年間広報計画では、なぜ発信するのか、相手に何を理解してもらいたいか、実行する人や予算は足りるかまで考えます。
例えば「6月に新サービスのリリースを出す」だけでは、計画として決まっていないことが残ります。誰の疑問に答える発表なのか、サービスの詳細はいつ確定するのか、誰が事実を確認するのか、発表後にどの反応を見るのかも必要です。
PR TIMES MAGAZINEの年間広報計画の解説でも、前提条件、目的、対象、体制、予算などを項目として挙げています。スケジュールは準備から振り返りまで含める考え方です。年間広報計画の立て方
本記事では、これらを少人数でも扱える一枚の表にまとめる方法を提案します。月ごとにすべての欄を埋めることより、実行する条件がそろっているかを見ます。
年間広報計画を作る5つの手順
1.今年、誰との関係をどう変えたいかを決める
「認知度を上げる」の一言から、もう一段具体的にします。例えば「地域の製造業の担当者に、新サービスがどんな業務の課題を扱うものか理解してもらう」と書けば、伝える相手と内容の範囲を決められます。
経営側が期待していることも確認します。問い合わせにつなげたいのか、取引先の理解を深めたいのか、特定のテーマで取材される材料をそろえたいのかを話し、広報で取り組む範囲を合わせます。
2.自社で発表できる事実を集める
新商品、サービスの変更、調査結果、イベント、協業など、今年動く予定を関係者から集めます。予定があることと、発表してよいことは別なので、内容の確定時期、公表の判断をする人、素材の有無も確かめます。
年間の記念日や社会的なテーマから考える場合も、自社に話せる事実があるかを先に見ます。記念日と商品名を結び付けただけでは、受け手に何を知らせる発表なのかが曖昧になります。
3.届ける相手と発信する場所を選ぶ
集めた事実を、誰に伝えたいかに合わせて分けます。自社サイトのお知らせで十分な内容、記者へ取材の題材として渡す内容、詳しい解説記事に向く内容は、同じ方法で扱う必要はありません。
配信本数を先に決めて無理に題材を当てはめるより、発表の性質に合う場所を選びます。プレスリリースにする内容の考え方は、プレスリリースの意味と目的でも説明しています。
4.準備・確認・発表・振り返りを日程にする
発表日から逆算して、資料を集める日、原稿を作る日、関係者が確認する日を置きます。関係する人が同じ時期に別の仕事を抱えていないかも見ます。
一年先まで詳細に固定せず、近い予定は具体化し、先の予定は候補と確認時期を残す方法があります。未確定の予定を確定した発表と同じ色や表示にしないようにします。
5.使える時間と予算に合わせて絞る
一本の原稿を書く時間だけでなく、素材集め、確認のやり取り、配信後の問い合わせ、振り返りにも時間を割り当てます。予定が収まらないなら、発信先や本数を減らす、時期を変える、分担する、のどれかを選びます。
外部へ依頼する場合は、任せる工程と社内に残す判断を分けます。原稿作成を依頼しても、未確定の事実を確定させる責任までそのまま渡せるわけではありません。依頼の範囲は、プレスリリースの配信代行で頼めることも参考になります。
年間広報計画のテンプレートに入れる8つの項目
最初の計画表は、次の項目で作れます。目的が異なる施策は行を分け、素材と担当が決まっていないものも、その状態がわかるように残します。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 目的・対象 | 誰に何を理解してもらうための施策か |
| 発表する事実 | 新しく知らせることと、それを確かめる資料 |
| 発信する場所 | 自社サイト、配信、個別の情報提供など |
| 発表時期・準備日程 | 公開日と、素材・原稿・確認が必要な日 |
| 担当・確認者 | 作業を進める人と、内容を判断する人 |
| 時間・費用 | 社内で使う時間と、外部に支払う費用の見込み |
| 見る反応・振り返る日 | 何を記録し、いつ次の改善を決めるか |
| 状態・見直す条件 | 候補か確定か。何が変わったら実施を再判断するか |
経営者に見せる表と作業管理の表を分けても構いません。ただし、発表日や確定の状態は、どちらを正しい記録として使うかを決めます。表が二つあり、一方だけが更新される状態を避けるためです。
年間広報計画の記入例:四半期ごとに何を積み上げるか
次は、法人向けの受注支援サービスを提供する架空の会社が、サービスへの理解を深めるために作る計画例です。実際の業績や成果の見込みではありません。四半期は説明上の区切りで、会社の年度に合わせて読み替えられます。
| 時期 | 伝える事実・目的 | 準備する材料 | 実施を決める条件 |
|---|---|---|---|
| 第1四半期 | サービスが扱う課題と、対象業務を説明する | 担当者の説明、業務の範囲図、公開できる仕様 | 仕様と提供範囲の確認が終わる |
| 第2四半期 | 新機能の追加と、利用場面の変化を知らせる | 機能の実画面、操作例、詳細ページ | 提供開始日と利用条件が決まる |
| 第3四半期 | 利用企業の事例を、具体的な業務の変化として紹介する | 取材内容、図表、確認できる記録 | 利用企業が内容と公表時期を確認する |
| 第4四半期 | 一年の取り組みを整理し、次の情報ニーズを確認する | 自社の発表、問い合わせ、取材の記録 | 外に出す内容と社内だけで使う内容を分ける |
この例でも、四半期ごとに必ずプレスリリースを出すわけではありません。新しい発表として出すものと、自社サイトで詳しく説明するものを分けます。事例の公表が決まらなかった場合も、架空の導入事例で予定を埋めず、時期か施策を見直します。
ひとり広報・兼任広報は、月の時間まで割り当てる
年間の案ができたら、直近の月だけでも時間に置き換えます。次は、広報に月24時間を使えるという仮定で、発表一本を準備する場合の配分例です。標準工数でも、アマノートの制作時間でもありません。
| 作業 | 仮の配分 | 予定に入れること |
|---|---|---|
| 素材集め・聞き取り | 4時間 | 担当者への確認、資料の整理 |
| 原稿・画像の準備 | 6時間 | 本文と、説明に必要な図や写真 |
| 事実確認・社内調整 | 4時間 | 修正、確認依頼、発表条件の調整 |
| 公開・配信・確認 | 2時間 | 入力、表示、リンク先の確認 |
| 振り返り | 2時間 | 反応の記録と次に直すこと |
| 問い合わせなどの余裕 | 6時間 | 取材調整、追加資料、予定外の対応 |
| 合計 | 24時間 | 待ち時間とは別に、担当者が使う時間の仮置き |
社内確認に一週間かかる場合でも、担当者が一週間ずっと作業するわけではありません。作業時間と、返事を待つ日数を別に置くと、他の業務と組み合わせやすくなります。まず一回の実績を記録し、次の月の配分を直してください。
この時間に収まらないなら、担当者の努力で埋める前に計画を調整します。画像を新しく制作するか、個別の媒体対応まで行うかでも、必要な時間は変わります。
自社の運用例:すべての出来事を配信の予定に入れない
ビズPRの運営会社アマノートは、他社メディアに紹介されたという報告を、自社サイトのお知らせに載せ、配信サイトには出さない方針を公開しています。プレスリリースとはで紹介している使い分けです。
年間計画に使う際のポイントは、予定の本数を満たすために、性質の違う出来事を同じ発表として扱わないことです。掲載されたという報告と、新サービスの開始では、相手に知らせる事実も、使う場所も変わります。
この運用だけで特定の成果が出ると示しているわけではありません。限られた時間の中で何を準備するかを決める際、題材ごとに発信先を分ける一例として使えます。
年間広報計画は、月次で「続ける・変える・見送る」を決める
月の振り返りでは、配信本数だけでなく、予定した材料がそろったか、確認が止まった工程はどこか、狙った相手からどんな反応があったかを見ます。件数の数え方や流入の調べ方は、広報の効果測定で扱っています。
実施しなかった施策も、理由を残します。公表の条件がそろわなかったのか、相手にとっての意味が弱かったのか、準備する時間が不足したのかで、次に直す場所が違うためです。
売上や問い合わせに変化があっても、一つの広報施策だけの効果と決めつけず、他の活動や時期の影響も確認します。直近の一か月を見直し、先の計画は必要なところを更新する。この運用まで担当を決めておくと、年間計画を日々の仕事に戻せます。
