プレスキットとは、記者や編集者が取材・記事制作に使える会社情報、画像、紹介文などをまとめた資料一式です。プレスリリースが「今回何を発表するか」を伝えるのに対して、プレスキットは、その発表を確かめて記事にするための材料を提供します。
本記事では、資料をたくさん入れるより、使ってよい素材と、その条件を迷わず選べることを優先します。営業資料を丸ごと渡すと、社外に出せる数字や画像を相手に選別してもらうことになりかねないためです。資料構成、素材台帳、確認手順は本記事の提案で、記入例は架空です。
プレスキットは、会社の共通資料と発表ごとの資料で作る
会社概要やロゴは複数の発表で使います。一方、新商品の画像やイベント案内は発表ごとに変わります。共通資料と案件資料を分けておくと、会社概要を直すたびに過去の案件フォルダを探し回る作業を避けられます。
PR TIMES MAGAZINEのプレスキット解説でも、企業情報や画像、紹介文などの整備が紹介されています。ここでは、その資料を「どの版が使えるか」「どこまで使えるか」まで分かるようにする方法を扱います。
| 資料の区分 | 用意するものと役割 |
|---|---|
| 最初に読む案内 | 何の資料か、更新日、素材の使い方、問い合わせ先、資料一覧 |
| 会社の共通資料 | 会社概要、事業の説明、公式サイト、会社名の表記、ロゴ |
| 今回の発表資料 | プレスリリース、商品・サービスの説明、日程・場所・提供条件 |
| 画像と説明 | 商品・人物・施設の画像、何を写したかの説明、撮影時期、クレジット |
| 根拠資料 | 公開可能な数字の定義、集計期間、調査概要、一次資料の参照先 |
| 取材の案内 | 対応できる内容と担当窓口、素材の追加依頼方法 |
すべての項目を同じ量で作る必要はありません。新商品の発表なら商品写真と販売条件、代表者へのインタビューなら経歴と人物写真を厚くします。相手が何を制作する予定か分かっている場合は、必要な資料への入口を案内文に書いておきます。
画像は、ファイル名と素材台帳で使い方を伝える
画像の内容がファイルを開く前に分かる名前にする
「完成版」「最新版2」のような名前では、受け取った人が用途を判断できません。「sample-product_front_202610.jpg」のように、対象・向き・時期が分かる規則を決めます。これは命名の例であり、特定の形式にそろえる必要はありません。
人物名や商品名を英数字にする場合は、対応する日本語表記を台帳に載せます。旧製品と新製品、試作品と販売品を取り違えないよう、画像の説明に区分を書きましょう。見栄えを優先した画像で実際の利用状態が変わる場合は、その点も説明します。
画像の大きさと利用条件を同じ場所に記録する
印刷用とWeb用では必要な条件が異なります。用途を聞き、元画像の縦横の画素数、縦横の構図、背景の有無などを案内します。すべての媒体に共通する最適サイズがあるとは扱わず、必要な大きさを相手に確かめてください。
画像を所有していることと、自由な配布・再掲載が認められていることは別です。撮影者や素材提供元との取り決めを確認し、加工の可否、クレジット表記、使用できる用途を載せます。条件が分からない素材は、確認が終わるまで提供候補から外します。
| 台帳の項目 | 架空の商品写真の記入例 |
|---|---|
| 素材ID・ファイル名 | P01・sample-product_front_202610.jpg |
| 内容・仕様 | 販売予定品の正面写真。横3000×縦2000画素、白背景 |
| 説明・時点 | サンプル社の商品「配送ボックス」。2026年10月撮影 |
| 用途・加工 | 今回の発表に関する報道・紹介用。切り抜きや色変更は事前相談 |
| 表記・確認 | 画像提供:サンプル社。担当部署が提供条件を10月28日に確認 |
この条件はあくまで記入例です。実際には自社が許諾できる範囲を確認して記入します。「報道利用可」と書くだけで、すべての権利関係が整理されるわけではありません。
会社紹介と数字には、確認できる参照先を付ける
会社紹介文は、社名、何をしている会社か、今回の発表との関係を短くまとめます。編集の都合に合わせて短い版と詳しい版を作る場合も、所在地、設立年、代表者名などの基本事項は同じ正本から確認してください。
社員数、利用者数、拠点数などの数字には、基準日と定義を付けます。「利用者」が登録者、契約者、実際の利用者のどれを指すかで意味が変わります。過去の営業資料にある数値をそのまま転記せず、外部に出せる最新の情報かを担当部署へ確認しましょう。
調査資料を付ける場合は、対象者、調査時期、方法、回答数、質問の条件が分かるページへつなぎます。グラフだけを切り離すと範囲を誤解されるおそれがあるため、説明とセットで渡せる状態にします。
掲載実績を紹介する際は、記事のタイトル、媒体名、公開日、元記事へのリンクを基本にします。記事画像の転載や媒体ロゴの利用は、確認した条件の範囲で行ってください。掲載された事実を示すことと、記事全体を再配布することは分けて考えます。
プレスキットを共有する前に、外部の受け手として開いてみる
共有するのは、配布用に確定した資料だけを置いた場所です。社内の検討メモ、未発表の企画、顧客の連絡先、担当者の個人的な連絡先が同じフォルダに混ざっていないか確認します。
公開ページに置く資料と、取材相手を限定して渡す資料も分けましょう。広く使ってもらう予定の素材に社内アカウントが必要だったり、限定資料が誰でも開けたりすると、意図した配布になりません。受け手に必要な権限だけが付いているか点検します。
確認では、受け手と同じ権限の状態でリンクを開き、案内文から必要な素材にたどり着き、ファイルを取得できるかまで試します。管理者のアカウントで開けることだけでは、受け手も開けるとは確かめられません。
メールには資料一覧とリンク、何を使えるか、追加素材の連絡先を載せます。相手から指定がない場合、大容量の資料を一方的に添付する前に、受け取り方法を確認してください。
プレスキットを更新する担当と、古い版の扱いを決める
新しい版を置くだけでは、すでに渡した素材は更新されません。台帳に更新担当、更新日、変更点を記録し、提供済みの相手への連絡が必要か判断します。商品名や数値など記事の正確さに関わる変更は、何が変わったかを具体的に伝えましょう。
古い素材を保管する場合は、現在の配布場所とは分けます。提供中止の画像は、後から使えると誤認されない表示にしてください。ファイル名だけで版を増やすより、入口の案内を一つにして現在の版へ導く運用を勧めます。
完成の目安は、担当者に口頭で説明してもらわなくても、受け手が会社の正式表記、今回の発表、利用できる画像、利用条件、問い合わせ先を確認できることです。取材当日の進め方は別の業務として整理し、発表原稿の構成はプレスリリースの書き方と合わせて準備しましょう。
